
はぐれもん
「甘えじゃないの?」って、親御さんだけじゃなくて祖父母や周りの人からも言われることが多いんですよね。ぶっちゃけこれ、一番子どもを追い詰める言葉のひとつです。なぜそう言い切れるか、現場の話をします。
「学校に行きたくないだけでしょ。甘えてるだけじゃないの」
ある土曜日の午前中、訪問看護の相談電話を受けました。電話口の向こうで、お母さんが泣いていました。夫からそう言われたと。「あなたの育て方が甘いから、子どもも甘えるんだ」とも言われたそうです。
お母さん自身も、心のどこかで「甘えなのかもしれない」と思っていた。でも毎朝子どもの苦しそうな顔を見ていると、これが甘えだとはどうしても思えない。その葛藤が、涙になっていました。
断言します。不登校は甘えではありません。
この記事では、なぜそう言えるのかを、精神科・訪問看護の現場で10年以上働いてきた看護師の視点から説明します。
→ No.1:不登校とは?原因・対応・相談先を親向けに完全解説
「甘え」という言葉が、子どもを追い詰める
【画像:子どもが布団の中で丸くなっているイメージ】

ママさん
正直、夫や義母から「甘やかしすぎ」って言われると、自分でも自信がなくなってきて。本当に甘えなのかなって。
「甘え」と言いたくなる親の気持ち
「甘えだ」と言いたくなる気持ちは、わかります。
毎日学校に行けずに家にいる。ゲームはできる。好きなものは食べる。外出できる日もある。「じゃあ学校だけ行けないのはなぜ?」という疑問が出てくるのは、当然の感覚です。
また、周囲からの目もあります。「なぜ学校に行かせないのか」という視線。祖父母からの「昔はそんな子いなかった」という言葉。そういった外からのプレッシャーが、親御さんを「甘えだ」と思わせる方向に向かわせます。
その言葉が届いたとき、子どもの中で何が起きるか
「甘えだ」という言葉が子どもに届いたとき、子どもの中で何が起きるか。
まず「自分の苦しさは本物じゃないんだ」という否定が起きます。次に「苦しいと言ってはいけない」という抑圧が起きます。そして「やっぱり自分はダメだ」という自己否定が深まります。
自己否定が深まると、さらに動けなくなります。「甘え」と言われるほど、回復が遠のくという逆説が起きます。
訪問看護で関わった子どもたちの多くが、「甘えって言われたとき、もう誰にも言うのをやめようと思った」と話していました。
不登校は甘えではない、医学的・心理的な理由
【画像:脳や心のイメージ、やわらかいイラスト風】

はぐれもん
「気合いで行け」が通じないのには、ちゃんと理由があります。気合いじゃどうにもならない状態になってるんです。これ、医学的に説明できます。
心が「行けない」状態になるメカニズム
人間の脳は、強いストレスや恐怖にさらされ続けると、自己防衛のために「危険な場所には行かない」という指令を出します。
学校でいじめや人間関係のトラブル、学習の失敗体験などが積み重なると、脳が「学校=危険な場所」と判断するようになります。この状態になると、行こうとしても身体が動かなくなります。
これは意志の問題ではありません。脳の防衛反応です。「甘え」や「根性がない」で解決できるものではありません。
身体症状が出るのはなぜか
不登校の子どもに多く見られるのが、朝になると腹痛・頭痛・吐き気などの身体症状が出ることです。
「仮病じゃないか」と思われることもありますが、これは本物の症状です。精神的なストレスが自律神経を乱し、実際に身体症状として現れます。起立性調節障害という診断がつくケースも多いです。
夕方になると元気になる、好きなことはできる、という状態も、自律神経の乱れによるものです。「夕方は元気なのに朝だけ具合が悪い」は、サボりの証拠ではなく、自律神経症状の特徴そのものです。
発達障害・精神疾患との関係
不登校の背景に、発達障害や精神疾患が隠れていることも少なくありません。
ADHDや自閉スペクトラム症のある子どもは、集団生活や感覚刺激への対応が難しく、学校生活で人一倍消耗します。うつ病や不安障害が発症していて、動けなくなっているケースもあります。
これらは本人の努力や気合いでどうにかなるものではありません。適切な診断と支援が必要な状態です。
「甘え」に見える行動の本当の意味
【画像:ゲームをしている子どものイメージ】

パパさん
でもさ、ゲームは何時間もできるのに学校は行けない。これはどう説明するんだ?正直、甘えに見えてしまう。
ゲームばかりしている
ゲームは「安全な世界」です。
失敗しても現実の人間関係に影響しない。自分のペースで進められる。頑張れば結果が出る。学校という「危険な場所」で傷ついた心が、ゲームの中で安心感を取り戻そうとしている状態です。
ゲームを取り上げると、唯一の安全地帯を失うことになります。状況がさらに悪化するケースを、現場で何度も見てきました。
昼夜逆転している
昼夜逆転は、怠けの結果ではなく、自律神経の乱れの結果です。
また、夜は「学校に行かなくていい時間」です。昼間は「行かなければいけないのに行けていない」というプレッシャーがかかります。夜になって初めて、そのプレッシャーから解放されて活動できるようになります。
昼夜逆転を無理に矯正しようとすると、唯一プレッシャーから解放される時間を奪うことになります。
好きなことはできるのに学校は行けない
これが一番「甘えに見える」と言われる状態です。
でもこれには明確な理由があります。好きなことは「やりたい」という気持ちが原動力です。学校は「行かなければならない」という義務感と、「行けない自分への罪悪感」がセットになっています。
脳が「安全」と判断している場所と活動はできる。「危険」と判断している場所と活動はできない。ただそれだけです。

はぐれもん
「好きなことはできるのに」って言葉、子どもはものすごく傷つくんですよね。「じゃあ学校も行けるはずだ」って言外に含まれてるから。好きなことができてるのは回復の証拠なので、むしろ喜んでいいくらいです。
親御さんへ、正直に伝えたいこと
【画像:親御さんが窓の外を見ながら一息ついているイメージ】

ママさん
甘えじゃないってわかった。でも、じゃあどうすればいいの?何もできない自分が情けなくて。
「甘え」と思いたくなるのは、それだけ頑張ってきた証拠
ここまで読んでくれた親御さんに、正直に言わせてください。
「甘えじゃないか」と思いたくなるのは、それだけ必死に考えてきた証拠です。何とかしたくて、理由を探して、「甘えなら気合いで解決できるはず」と思いたかっただけです。
子どものことをこれだけ考えている親御さんが、間違った親御さんなわけがありません。
ぼくが訪問看護で関わってきた家庭で、「甘えだ」と思っていた親御さんが、本当の理由を理解した瞬間に泣き崩れる場面を何度も見ました。「そうか、苦しかったんだね」という言葉が、子どもを変えるきっかけになった場面も、何度も見てきました。
親御さんが楽になることが、子どもへの一番の支援
「甘えじゃない」とわかったとき、次にすべきことはひとつです。
親御さん自身が誰かに話を聞いてもらうこと。
子どもへの対応を考える前に、まず親御さんが今の苦しさを誰かに吐き出してください。カウンセラーでも、信頼できる友人でも、相談窓口でも。
親御さんの心に余裕が生まれると、子どもへの言葉が変わります。言葉が変わると、子どもが少しずつ動き始めます。これは理論ではなく、現場で何度も見てきた事実です。
→ No.9:不登校の子どもにカウンセリングは有効?選び方と費用
→ No.80:不登校の子どもへの声かけ、言ってはいけない言葉
→ No.75:子どもの不登校、親はどう向き合えばいいか
まとめ:甘えじゃない、ただ限界なだけ
不登校は甘えではありません。
心が限界を超えて、身体が「行けない」という状態になっているだけです。気合いで解決できないのは、気合いの問題ではないからです。
「甘えだ」という言葉を手放したとき、子どもへの見方が変わります。見方が変わると、関わり方が変わります。関わり方が変わると、子どもが少しずつ変わります。
まず「甘えじゃないんだ」と知ることが、最初の一歩です。

はぐれもん
「甘えじゃない」ってわかっても、じゃあどうすればいいかわからないって方、多いと思います。一人で抱えないでください。まず話を聞いてもらうだけでいいです。それが最初の一歩になります。
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